『森は折り合いをつけながら生きている』
内山 節 代表挨拶( 2023年5月28日 NPO法人森づくりフォーラム総会)
ようやくコロナも一区切りついたのかどうかわかりませんが、一時期の雰囲気は薄くなっており、私たちの活動もより一層動きやすくなっているという感じがしています。
ご周知のように森づくりフォーラムは、自分たち自身が一つの事業団体的な性格を持っているのと同時に、色んな形で各地の森づくりの活動を支援したり、連絡を取り合ったりする団体でもありますし、さらに森林に関する政策を提言していくという面も持っております。
ですので、少しやむなくコロナ禍で低迷していた部分というのもありますので、これから一層、もう少し大胆に動いていけたら良いなと思っています。
同時に、私の個人的な気持ちですけれども、森の維持と林業の維持、それから山村の維持などを考えていた場合に、それらは重なり合っている部分もあるけれども、繋がらない部分もあったりします。何なんだろうと考えていくと、今まで色んなことに対して目標を作って、その目標を実現すべく努力するという、そういうやり方というのは、現代社会では色んなところで用いられている。
それと特に林業の場合ですと、50年計画・100年計画というある種の目標をつくっている。それに向かって努力をしていくという形でしか成り立たないのが林業といっても良いわけですけれども、森というのは目標なんかなく、その都度その都度の条件下で、折り合いをつけながら展開していくというのが、森の姿である。
ですから、それまで大きな木が生えていた森が、何らかの伐採や、火災などで失われたりすると、それを見ている人間の側はある種、残念な気持ちを持ったりする場合もあるわけですけれども、森の方はまたその条件を活かして、新しく森を再生する。そこに何10年かかるのか、場合によっては何百年かかるのかという、そういうこともありますけれども、そんなものをどうでもいいかの如く、時間をかけながら折り合いをつけていくという、そんな感じがします。
ですから、人間の側から目標を作って何かをしていく。それに対して自然の側は、折り合いを付けながら、ある意味目標を持たずに生きていく。ただ、これは奥の方では相当のズレが発生しているのではないかという気がしています。
地域づくりにおいても、市町村を中心にして目標をつくって、そこに向かって邁進しましょうという感じでやっていくと、しばらくすると大失敗しているというケースがよくあって、むしろその時の条件下で折り合いをつけながら、皆が元気にその都度その都度生きていくという、そういうようなものが、もしかすると本当の地域づくりかもしれないという気持ちです。
この折り合いをつける生き方と目標を持つ生き方という奥の方にあるズレというのは、どうやったら解消できるのかというようなことは、頭の片隅に置きながら、私自身はこの森づくりフォーラムの活動に関与していこうと思っておりますので、これからも宜しくお願いします。
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写真:中沢 和彦
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NPO法人森づくりフォーラム