『私たちは何に守られて生きているのか』
森づくりフォーラム 内山 節 代表理事 2022年度総会時メッセージ
(本記事は2022年5月22日オンラインで行われた、森づくりフォーラム総会時の内山節代表理事の挨拶を、文字起こしして作られています。)
今の世の中を見ると、嫌なことがたくさん起きているという感じがする。私たちの活動は、「森を守っていけるような社会を創りたい」ということで、それを林業関係者や山村の人たちだけに任せるのではなく、様々な形で様々な人が参加しつつ、全体として森を本当に守っていけるような日本の社会を創りたいというところから出発している。
それは今でも重要な課題だが、今の情勢を見ると、より大きな視点も必要だと感じている。例えば、ウクライナ情勢でもそうだが、「森と共に暮らす社会」というのは、「私たちが森に守られている社会」を考えることである。別な言い方をすれば「自然に守られていることを考える社会」であると思う。
常に、私たちの社会の中には守っている他者がいることを強く意識していく、その他者として、私たちは森あるいは自然というものを考えている。
森・自然という他者が守っているからこそ、我々が生きる世界があるのだと、その様な考え方を持つことを定着することが出来たならば、今のように人間の勝手な思い込みだけで他国を侵略することや、自分たちの領土を拡張しようとすることの根本的なおかしさを、もう少し私たちは気付きやすくなると思う。
ロシアがやっていることは、弁解の余地がないため、それを批判することはその通りでよい。しかし、人間中心主義的な社会はこのようなことをもたらす、という視点も必要である。
コロナ渦の3年間も同じである。私たちはコロナの感染を拡大させる必要はなく、自分も感染する必要もなく、警戒することは当然である。しかし、忘れてしまっていることは、コロナも含めて自然の世界があるということであり、そのような世界は、私たちを時にピンチに追い込むが、別の面では私たちを守っていることである。
そのようなことを感じながら、感染対策を考えていくことならいいが、人間にとって都合の悪いものは敵であるというような、可能ならばコロナ菌など撲滅してしまうというような社会を、私たちはつくっていっていいのかという疑問がある。
「森林をどのように守るのか」から始まり、「私たちは何に守られて生きているのか」という、そのことをもう一度考えていけるような方向性を少しずつでも示していきたいと考えている。
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