掛川・倉真の森から広がる『関わりしろ』
~ NPO法人時ノ寿の森クラブの取り組み~
「全国の集い2019」は静岡・掛川で開催
「森林と市民を結ぶ全国の集い」(以下、「全国の集い」)は、
森林ボランティアをはじめとした森林に関心のある市民による情報交換を
目的としたもので、1996年から基本的に1年に1回、全国で開催されてきました。
23回目となる今回は静岡・掛川にて2019年6月15日-16日に開催されます。
今回の開催テーマは
『あなたと森林・里山との「関わりしろ」を考える。』
本記事では「全国の集い2019 in静岡・掛川」実行委員会の事務局を担い、
今回の舞台となる掛川市倉真地域にて、森林を核とした様々な活動を
展開するNPO法人 時ノ寿の森クラブについてご紹介します。
「全国の集い2019 in静岡・掛川」詳細・お申込みは→こちら
時ノ寿の森クラブのあゆみ ~廃村からスタートした森づくり~
掛川市倉真(くらみ)の大沢集落は、戦後の都市部への人口流出の影響を受け、
1975年に廃村となっていました。以来、この地区周辺にあった森林は管理が
行き届かず、森林荒廃が進んでいました。
そのような状況を何とかしたいと立ち上がったのが、大沢集落に生まれ育った
松浦成夫さん。現在、時ノ寿の森クラブの理事長を務めています。
時ノ寿の森クラブが発足したのは2006年。松浦さんが知人を誘って大沢集落の
森林で炭焼きと除間伐作業をスタートし、19名のメンバーで結成されました。
クラブ結成後、まず手がけられたのは拠点施設「森の駅」です。
建材にはメンバーが伐採したスギやヒノキの間伐材を利用し、床下には間伐材から
できた木炭が600kg敷き詰められています。地域住民でクラブメンバーでもある
左官、大工、電気技師の協力を得て2008年に完成しました。
完成以来、メンバーをはじめ森づくりの参加者のベースとして利用されてきた
この森の駅は、2018年より「B&B ゲストハウス森の駅」という宿泊施設として
リニューアル・オープンしました。
「森に癒され、森で遊び、森で食し、森で泊まり、森で過ごす。」
ゲストハウスとなった森の駅では、森に囲まれた場所でこそ味わえる、五感を
刺激する様々な体験ができます。
「森の駅」を建設以降、時ノ寿の森クラブは倉真地区での森づくりを更に推進して
いきます。2012年には静岡県の森林税を活用した「森の力再生事業」を、民間企業の
造園会社と協力して取り組み、2015年までに約74haの森林を整備し、これまでに
300ha以上もの整備を行っています。
実際の整備作業は造園会社が中心を担い、時ノ寿の森クラブは民有林所有者350名を
一軒一軒周り、整備への了解を取りつける調整役を担いました。
その活動は掛川市流域にも広がります。2011年の東日本大震災をきっかけに、
掛川市の海岸林再生のための植樹・育樹イベントを実施するようになり、
これまでに掛川市内で10万本の広葉樹を植栽しました。
また、掛川市と共催して「森づくりを未来につなげる全国サミット&シンポジウム」
を実施する等、流域全体を巻き込む森づくりの活動も行うようになっています。
時ノ寿の森クラブの挑戦とビジョン ~ いのちの森を未来へ ~
団体立ち上げから10年となる2016年に時ノ寿の森クラブは、マニフェスト
「いのちの森を未来へ~これまで10年、これから100年~」を発表しました。
緑と水の豊かな森を、次世代の社会を担う子供たちにつないでいきたい。
その思いが込められた「時ノ寿の森 夢マップ」には、これまでに
整備をしてきた森林フィールドを活用した様々な取り組みが広がる、
時ノ寿の森のビジョンが描かれています。
このビジョンの実現に向けて、時ノ寿の森クラブの新しい取り組みが
はじまっています。先の「B&Bゲストハウス森の駅」経営もその一つですが、
大きな柱となるのが「時ノ寿學校」です。
「時ノ寿學校」は森林フィールドを活用した次世代の人材育成プロジェクトです。
企業を対象としたリーダー研修として森を活用する「森のリトリート」、
地域の森づくりの担い手を育成する場として活用するための
「森づくり安全技術・技能習得制度」地域協議会の設立検討、
また、幼児向けの環境教育として「森のようちえん」プログラムも
2017年よりスタートしており、人材育成にフォーカスした様々な取り組みが
計画・実施されています。
その他にも森の駅と同じく間伐材でできた「森の集会所」をカフェとして
利用したり、同地での森林資源で生まれた「森の恵み石けん」の開発・販売する等、
森林を活用した様々なソフト事業の展開を進めています。
「全国の集い2019 in静岡・掛川」をきっかけに広がる「関わりしろ」
現在進行中で森林を活用したソーシャルビジネスに取り組む
時ノ寿の森クラブは、2017年に「全国の集い」の開催候補地として
立候補し、2019年の開催地となりました。
里山の恵みを活かし、分かち合うことを目指す実践地として、
時ノ寿の森を活用し、地域と都市住民との「関わりしろ」(=携わり方)を
考える機会をつくることが今回のテーマです。
本集いの事務局の中心となっている、事務局の大石さんにもお話しを
伺いました。大石さんは2016年に生まれ故郷である掛川市にUターンし、
時ノ寿の森クラブでの活動に参加し、代表の松浦さんと出会い、
現在同法人の常勤職員として多くの事業に関わっています。
大石さんによると、今回の企画をきっかけにして倉真地区が一つに
なろうとしているとのことです。大石さんも所属する地元消防団の協力や、
地元農家や茶生産者、旅館の協力を得て、開催当日の交通誘導や交流会・地元
産の物産販売、宿泊地提供などのコンテンツづくりができたことが大きいそうです。
また時ノ寿クラブメンバーによる地元住民に直接声かけをして、参加促進も
実施しており地域内での交流はより深まっているとのことでした。
時ノ寿のクラブによる森の活動がネットワークの中心として、
倉真地区で暮らす様々な人々がつながることで、一つの「関わりしろ」が
できつつあります。
さらに時ノ寿のクラブの「関わりしろ」は、都市部への広がりも見せています。
同クラブと所縁のある「一般財団法人 森林環境整備財団」は、
「全国の集い2019 in静岡・掛川」開催に合わせて掛川の名所を巡る
クラウドファンディングを実施しています。
詳細はこちら→
東京と掛川を結ぶ、きっかけづくりを!地方の魅力を多くの人へ!
このクラウドファンディングは、「全国の集い」のコンセプトである
都市住民と地域住民との交流を実現するために、都市からの参加者を促進し、
魅力ある掛川を体験してほしいという思いでツアーを企画し、都市側で
地域にコミットしたい人を募っています。
(5月13日に目標金額を達成していますが、募集は継続されています。)
このように、時ノ寿の森クラブの周辺では、地域への思いを抱く様々な人が
関わり、その地域への思いや行動が少しづつ広がりを見せています。
私たちに癒しを与え、活力を育む森林は、直接的にも間接的にも私たちの
生活に欠かせない恩恵を与え続けています。
そんな森林との「関わりしろ」を、地域に暮らす人も、都市で暮らす人も
それぞれの立場から考える。
時ノ寿の森クラブが中心を担う「全国の集い2019 in静岡・掛川」を、
そのきっかけの場にしてはいかがでしょうか。
「全国の集い2019 in静岡・掛川」詳細・お申込みは→こちら
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記事:宮本 至(NPO法人 森づくりフォーラム)
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