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2020年9月10日 お知らせグリーンボランティア保険

安全な森づくり活動のために『ハチ刺されの対応』

安全な森づくり活動のために 
『ハチ刺されの対応』

夏から秋にかけては、ハチが活発に活動する季節です。その時期には、森づくりでのハチ刺されの事故も多くなります。
森づくりフォーラムのWEBサイトでは、2019年に安全な森づくりの活動のために<事故事例に学ぶ>『ハチ』を掲載しました。
今回は、ハチ刺され後の対応について、詳しくご紹介いたします。ポイズンリムーバーの正しい使い方や、おすすめのポイズンリムーバーもご紹介していますので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

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✎記事・写真 森中 大晴(森の安全を考える会

ハチに刺された時には、まず応急手当を行い、その後医療機関での治療を行います。

現状確認

ハチに刺された場合、まず近くに巣がないかを確認します。巣の位置を確認したら、ゆっくりと安全な場所まで後退します。これは、応急手当をおこなうためと、毒に含まれている警戒フェロモン(攻撃フェロモン)を察知したハチから身を守るためです。
なお、周りの人もあわてて救護に駆け寄るのでは無く、巣の位置を確認し二次災害の防止に努めます。
救護者は、刺された人へ刺傷歴、前回の刺傷時の症状やエピペン等の処方薬の有無を聞き取っておきます。
エピペンが処方されているのであれば、その場ですぐに注射します(原則、本人よる注射)。

傷口を確認

ハチに刺された箇所を確認します。これは次に出てくるポイズンリムーバーで吸い出す際にどこに刺し傷があるか前もって確認しておきます。
傷口に毒針や毒嚢が残っていた場合は、ピンセットや毛抜きで除去します(ミツバチやオオスズメバチの場合、針がハチの身体からちぎれ、傷口に刺さったままとなることがあります)。

毒の吸い出し

ポイズンリムーバーを使って3分以上吸引し※、ハチ毒を体外へ吸い出します。吸引すると血液やリンパ液等の体液と一緒に毒を体外に吸い出すことができます。
※毒を体外に吸い出すためには3分以上吸引する必要があるといわれています。ポイズンリムーバーの1回の操作で3分以上吸引することも可能ですが、夏場の汗をかいている場合や、体毛等により気密が漏れるような場所の傷口の場合は、1分程度で一度外し、再度吸引を繰り返すことを推奨します。
ポイズンリムーバーが無い場合は、手で絞りだすか(口では吸わないように)、流水下で流し出すようにします(ハチ毒の成分はそのほとんどが水溶性のため効果があります)。


吸引中                吸引後

搬送

ポイズンリムーバーでハチ毒を排出し終わり、自力歩行できるようであれば、そのまま医療機関へ向かいます。このとき下山途中でアナフェラキシーショックが発現して歩行困難となる場合や、運転中に気を失って事故を起こす場合があるため、必ず誰かが付き添うようにしてください。
また医療機関については、救急外来があるところを事前に確認しておくようにしておきましょう(もしくは、皮膚科、アレルギー科などがある医療機関)。
なお、自力歩行ができない、気を失い応答が無い、見たからに具合が悪そうな場合は救急車を呼びます。

救急車が来るまでの傷病者の管理もしくは容態急変した場合

ハチ刺傷で一番怖いのがアナフェラキシーショックです。容態急変した場合15分程度で死に至ります。このため常に傷病者から目を離さないようし、自発呼吸が見られない場合は直ぐに心肺蘇生おこないます。もちろん、エピペン処方されていれば、速やかに注射します。
まれに親切心から様々な塗り薬や内服薬をくださる方をお見受けしますが、救急搬送もしくは医療機関への搬送を予定している場合は、エピペン以外の薬剤は使用しないようにしてください。塗り薬などの外用薬は医療機関にて洗い落とされますし、内服薬の場合、(お薬の相互作用等により)医療機関でのお薬の投薬ができなくなる可能性もあります。
また、救急隊に引き継ぐまでに行った処置を全て時間と共に記録しておきます(10:30頃刺傷2箇所、10:35エピペン注射、毒抜き3回、10:45容態不良、10:48救急連絡、・・・等)。

ポイズンリムーバー(毒吸い出し器)の紹介

近年、数多くの種類のポイズンリムーバーが発売されています。今回、その中でも定評のある3機種を紹介します。

■インセクトポイズンリムーバー(INSECT POISON REMOVER)

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デンマークのドクターヘッセル社が販売し、国内へは飯塚カンパニーによって輸入されています。国内では一番古くから発売されています(1990年代には発売されていた)。白いポリエチレン製で重さ12gほどで軽く、付属品も少ないため小さなビニル袋にいれて持ち歩きが可能です。
使用方法は、傷口にカップ面を押し当て、レバーを引っ張るだけですが、吸引を続けるにはレバーを引っ張り続ける必要があります。カップは傷口に合わせて差し替えることが可能です。価格も1000円前後とお手軽ですが、耐久性に難があり1~2年でカップが壊れてしまいます。

■エクストラクター / アスピブナン(THE EXTRACTOR / ASPIVENIN)

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フランスのアスピラボ社が販売し、国内へは飯塚カンパニーによって輸入されています。アウトドアショップやDIY店でよく見かける黄色いボディがエクストラクターです。一番普及したポイズンリムーバーだといえますが、その代わりコピー品も多く出回っています。近年、緑色ボディのアスピブナンが発売されました。
透明のカップが数種類付属されていて傷口に合わせて細かな使い分けが可能です。本体とカップがしっかりとした作りのケースに収納されていて持ち運びが便利です。(重量87~96g)
使用方法は、本体にカップを装着し白いピストンレバーを引き出します。カップを傷口にあて、ピストンレバーを最後まで押し込むと「シュッ~」と脱気されて吸引が始まります。ピストンレバーを引き出すと吸引が解除されます。

■ベノム・エクストラクター(VENOM EXTRACTOR)

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オランダのケアプラス社のベノム・エクストラクターは、あまり実物販売では見かけませんが、アマゾン等のECサイトなどで購入することが可能です。赤色の重厚感のあるボディが特徴で、大小のカップと取扱説明書(各国言語対応)が付属し、これが同色ケースに納められています。重量は多少重くて138gほど。
使用方法は、本体にカップを装着し、カップを傷口に当てロックが解除されるまで押し込みます。ロックが解除されるとシリンダー部分がバネの力で伸びて吸引されます。吸引を解除するには本体を横に倒しカップ端から空気をいれてあげることで行います。再度吸引するには、伸び出たシリンダーを押し込んでロックをかけることでセットが完了します。

おすすめは、アスピラボ社のエクストラクターまたはアスピブナンです。販売価格は、エクストラクターで3000円前後、アスピブナンで4000円前後ですが、ほぼ一生モノと考えていただいて結構です。筆者はもう20年以上使っています。

<ポイズンリムーバー購入後の注意点>
購入した毒吸い器は、必ず事前に練習しておいてください。特にエクストラクター、アスピブナンは、ピストンレバーを押しきれない方(女性や偶に男性でも)がいらっしゃいます。かならず片腕を刺された想定として、片手で操作できるようにしてください。ベノム・エクストラクターはピストンスプリングが強いため手早く反復使用するにはコツが必要です。こちらも練習をしてから備えてください。
※練習時の注意点:肌が弱い方はうっ血したりして跡が残ることがあるので、太股など着物で隠せるところが良いと思います。

✎記事・写真 森中 大晴(森の安全を考える会

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