団体会員紹介(NPO法人 森は海の恋人)
森づくりフォーラム団体会員紹介
▶ NPO法人 森は海の恋人(宮城県気仙沼市)
http://www.mori-umi.org/
NPO法人森は海の恋人は、環境教育・森づくり・自然環境保全の3分野を主な活動分野とする特定非営利活動法人です。東日本大震災後は、大津波と地殻変動により大きく変化した自然環境をそのまま活かしたまちづくりに取り組んでいます。
森づくり事業(植樹祭)
海の水質が悪化・・・牡蠣漁師たちの植樹から活動がスタート
平成元年(1989年)、気仙沼の牡蠣漁師が集い任意団体「牡蠣の森を慕う会」を結成。気仙沼湾に流れ込む大川上流部に木を植える活動を開始しました。活動の背景には、気仙沼湾の水質の悪化がありました。度重なる赤潮の発生で牡蠣の身が赤く染まり、市場では血牡蠣と呼ばれ大量に焼却処分されてしまいました。近隣の工場や家庭からの排水が赤潮発生の原因の一つとされ、海の富栄養化が問題視されました。同時期に、気仙沼湾に流れ込む大川中流部にダムの建設計画がありました。本活動は、正常な海の環境を保つための森づくりと、ダム建設への反対運動という側面があります。活動を継続したことでダムの建設は中止され、また、下水道の整備が進んだことで赤潮の発生は徐々に収束していきました。
環境教育事業(牡蠣養殖筏観察)
森づくり活動である「森は海の恋人植樹祭」は、活動地である岩手県一関市の室根第12区自治会との協働で継続して開催しており、今年で32回目を迎えます。
森づくり事業(植樹祭)
海だけ森だけではなく、「地域」を見る
震災で変化した自然環境を活用し「地域活性化」へ
海だけ、森だけを守るためではなく、「流域」という広範囲の自然環境とそこに住む人々を巻き込んだ活動になります。そのため、ローカルからグローバルな活動への広がりがあり、また、活動開始から30年以上も経過していることから世代を超えた活動へも繋がっています。
環境教育事業(カツオの解体)
東日本大震災後は、地殻変動による地盤沈下で激変した自然環境を活用し、地域活性化に取り組んでいます。複数の大学等の研究者との協働で、自然環境の何がどのように変化しているのかをモニタリングし、そのデータを基に災害復旧工事の担当行政へ提言を続けています。その結果、主たる活動フィールドである気仙沼市舞根地区では、被災沿岸部の中で唯一、巨大なコンクリート製の防潮堤建設計画を白紙にすることができました。
また、同地区における河川護岸の災害復旧工事についても、粘り強く行政と話し合いを続けた結果、河川護岸の一部開削工事を実現することができました。災害復旧工事の枠の中で、洪水を容認し、河川護岸を造り直すのではなく「壊す工事」は国内では初めてだそうです。
護岸開削工事(災害復旧)
震災で新生した塩性湿地は、護岸の開削により水交換が良くなり、変化に富んだ自然環境として移り変わろうとしています。その変化を科学的な知見からモニタリングし続けています。調査の過程で新種の川エビ(和名:キタノスジエビ)も発見されました。
環境教育事業(講義)
湿地の保全活動では、生物の生息地保全以外の成果が現れ始めています。我々は定期的に自然環境調査を実施し、データを活用して提言を行っているだけですが、湿地内にはアサリやウナギ等が自然に増え、稚仔魚の生育の場にもなっていることから、それらを餌とする野鳥が増えてきました。次に、今度は「ヒト」が集まり始めたのです。野鳥観察や視察者、若手の研究者等が国内外から集まるようになってのです。
震災湿地は「放っておく」という保全活動を続けた結果、多様な生物の育成空間を構築することができ、また、交流人口の増加により地域活性化の一助となることができたのです。
水源の森から海まで、地域丸ごと保全を目指す
舞根湾
舞根地区を流れる西舞根川の水源地から海(舞根湾)まで、集水域を丸ごと保全する活動を始めます。海から水源地までは約3㎞あり、植生はスギの人工林が主で一部雑木林もあります。スギ林は全抜せずに抜き切りし、空間を開けることで林床の植生に変化をもたらし、植生の多様性を確保しようと考えています。具体的な計画はこれからですが、時間を掛けてじっくりと流域の自然環境に向き合い、順応的に管理していこうと考えています。
スタッフのみなさま
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NPO法人 森は海の恋人
〇所在地:宮城県気仙沼市
〇設立:1989年(2009年 NPO法人格取得)
〇ホームページ:http://www.morinari.com/
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