森づくりフォーラム・ニュース

2019年7月9日 お知らせグリーンボランティア保険

安全な森づくり活動のために<事故事例に学ぶ> 『ハチ』

安全な森づくり活動のために
<事故事例に学ぶ> 
『ハチ』

ハチについて予備知識を持っていますか?

森づくりフォーラムの運用している「グリーンボランティア保険」では、
ハチに刺されて病院で治療を受けた事故報告が毎年数件はあります。
事故の時期は7月~10月の間、
大半が下草刈りや道路脇の藪払い作業の際に起きています。
中には歩行中のケースもあります。

下草刈りでハチの巣に気づかずに作業を行い、
刺された経験をお持ちの方も多いと思います。

多くはアシナガバチで、現場での応急措置で済んでいるケースが多いようです。
病院で治療を受けるのは、ほとんどスズメバチの場合と考えられます。
刺すハチの中でも、スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの仲間は
社会性のハチで、巣を刺激すると働きバチが集団で攻撃し、毒性も強いのが特徴です。

フタモアシナガバチの初期営巣(©森づくりフォーラム)

刺された時の痛みは激しく、とりわけスズメバチの場合は痛みも腫れもひどく、
また蛋白分解酵素、マンダラトキシン等のハチ毒物質が抗原となって、
人によってはアレルギー反応である全身症状(アナフィラキシーショック)を
起こして死に至ることもあります。
アシナガバチでもヒアルロニダーゼが抗原となるので油断はできません。
ちなみに、日本では毎年20~30人がハチに刺されて亡くなっています。

既に刺されたことのある方は、2回目以降にハチ毒が体内に入るとアナフィラキシーショックが引き起こされることが多くあります。
さらに短期間(特に1~2年以内)に刺されると、アナフィラキシーショックを
起こしやすいという報告もありますので注意が必要です。
また、初めてのハチ刺されでも、多量のハチ毒が体内に入ると
同様な症状を引き起こすことがあるのでこれも注意が必要です。

クヌギの蜜を吸いにきたチャイロスズメバチ©森づくりフォーラム

事前予防対策と応急処置

森づくり活動では、ハチについての予備知識を持っておくことが必要です。
特に、イベントの際には、参加者へのハチに対する注意事項の周知、
事故時の対応等について団体内で共有しておく必要があるでしょう。
以下に留意事項(案)を作成してみました。

(1)事前対策
 ① 巣があるかどうかの下見
   巣があれば、当日は巣に近づかない配慮が必要です。

 ② 参加者への服装・帽子の色や香水についての注意
   黒い色はハチに敵と認識される危険性が高いです。
       香水はハチを引き寄せる結果になります。

   ③ 当日利用可能な救急病院の把握
 
   ④ハチ刺傷事故が発生した場合の対応方法の策定、周知
  
 ⑤ポイズンリムーバー等の救護器具の正しい使用方法の習得

(2)当日の対応
 ① スズメバチとアシナガバチの見分け方の周知

  ハチに刺された時に、スズメバチかアシナガバチかにより対応も違ってきます。
  どちらに刺されたか分からないと対処に苦慮することになります。

 ② 興奮しているハチと様子見のハチへの対応
  ハチを刺激しない行動をとることが重要です。
  様子見のハチは、こちらが急な動きや手で払うことをしなければ
  刺されることはないでしょう。顔の前まで来てもじっと我慢の子です。
  大顎をカチカチ鳴らしているような興奮したハチなら、
  姿勢を低くしてゆっくり遠ざかることです。

 ③ 下草刈りの時は上方にも注意する
  下ばかり見ていると、枝に付いたアシナガバチの巣を見落とします。

 ④ 巣の周囲を刈り残した際には、他の参加者へ周知する
  周りの人への周知不足から、他の人が該当地で作業を行って、
  ハチに刺されるケースが多々あります。

 ⑤ ポイズンリムーバーの携行

(3)事故時の対応
 ① けが人のハチ刺され経験の有無
  刺された時期、処方の有無、処方箋を携帯しているかどうか等
  について確認が必要です。
  アナフィラキシーショックが発症すると、
  早い人で数分のうちに意識を失ってしまいます。

 ② 刺された箇所を水で良く洗い、冷やす

 ③ ハチ刺されの場合は、ポイズンリムーバーで毒液を吸い出す
   毒を全部吸引できるわけではないが、吸い出した分だけ症状は緩和されます。

ポイズンリムーバーの使用中©森づくりフォーラム

④ スズメバチなら病院で治療を受ける
  上記の処置をしても、刺された箇所の周辺が倍位に腫れてくるのが普通です。
  なるべく早く病院で治療を受けるのが無難です。

 ⑤ アナフィラキシーショックの症状が見られる場合
  目まいや吐き気、じんましん等の症状がある時は、
  アナフィラキシーショックを起こしている可能性があります。
  一刻も早く病院に連れて行く必要があります。
  救急車を呼ぶことも考えましょう。
  なお、抗ヒスタミン薬は効果が出るまでに
  時間がかかることに留意しておきましょう。

<記事・写真>
 久保田 繁男(NPO法人森づくりフォーラム 理事)
 森中 大晴(森の安全を考える会)      

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