森づくりフォーラム・ニュース

2025年9月28日

広く開かれた学校林で森林環境教育の充実を目指す — パウロの森くらぶ

広く開かれた学校林で森林環境教育の充実を目指す
パウロの森くらぶ
 (東京都八王子市)

2025年9月の定例活動に参加した会員

 パウロの森くらぶは森林インストラクター及び地域の皆様、合わせて会員60名程の団体です。高尾山の北側に連なる山の麓にある、聖パウロ学園高等学校が所有する23haの広大な森林(パウロの森)を整備しています。月2回の定例活動で整備した森で学園の森林体験学習や近くの小学校の森林環境教育、ボーイスカウト研修、一般の大人や家族対象の森づくり・自然体験イベントなどを実施しています。また地域貢献活動として学園の行事や地元のまちづくり協議会主催のイベントに参加しています。

広大な学校林で森林環境教育の充実を目指す

 森林インストラクターの資格取得者で組織した森林インストラクター東京会(略してFIT)が、森林体験学習の指導や森づくり・里山整備作業の実践の場の一つとして、八王子恩方町に山林を含む23haの広大な敷地を有する聖パウロ学園高等学校の学校林(パウロの森)で、森林体験学習の指導や整備活動を引き受ける形で2004年にスタートしました。2013年に更なる森林環境教育の充実を目指して、FIT会員だけでなく、広く市民や卒業生を含めて活動する「パウロの森くらぶ」が設立されました。現在60名ほどの会員で活動しています。

定期的な森林整備で安全で豊かな森をつくる

 スギ、ヒノキの人工林と昔薪炭や肥料を供給した雑木林からなるパウロの森は、多くの種類の植物があり色々な昆虫、鳥、哺乳類が棲息する生物多様性の豊かな森です。その森を利用して、所有する聖パウロ学園の生徒対象の森林体験学習や近隣の小学校児童対象の森林環境教育、中学・高校生のボーイスカウト対象の研修、一般の市民や家族対象の森林内の体験イベントの企画・実施と幅広い活動を行っています。

 それらの活動を安全に実施できるように、森の整備活動を月2日、パウロの森くらぶ会員で定期的に実施しています。雑木林の枯損木の伐採やスギヒノキの人工林の間伐、林内の観察道の整備を行っています。ここ3,4年はなら枯れ病の被害が拡大し、樹齢50年~60年、直径40cmを超えるコナラやクヌギが立ち枯れし、落枝や倒木の危険を除去するため大口径の枯損木を伐倒する雑木林の再生活動に注力しています。雑木林の再生活動と並行してイノシシに荒らされた観察道や大雨によって土砂に埋もれた山道の整備活動を定期的に実施しています。

 また生物多様性の高い森を目指して、落葉溜めを整備してカブトムシの繁殖、小鳥の巣箱やムササビのねぐらとなる木箱をかけて、昆虫や鳥、動物が棲む環境を整えています。

森の整備活動:ナラ枯れ病で枯れたクヌギの大木を伐採

広く開かれた森、様々な体験イベントを実施

 整備した森を利用した、聖パウロ学園高校の森林体験学習を年間のべ9回実施しています。生徒たちが鋸を使ってスギやヒノキを伐倒し、その材を使った丸太ベンチ作りや山道の階段作り体験や、森林内の春の若葉を採取して味わう体験など森林の恵みを体験する活動を支援しています。

聖パウロ学園の森林体験学習:樹齢60年のスギの伐倒作業(受け口切り)を体験

 また近隣の小学生をパウロの森に招いて、森の中を歩く、間伐作業の見学、間伐材の皮剥きや丸太切り作業を体験する森林環境教育にも取り組んでいます。東京都のボーイスカウト連盟の「森林愛護章」の研修でも参加した中学・高校生に植林や伐倒作業体験、森林の樹木学習で協力しています。さらに地域に開かれた森を目指して、一般の家族を対象とした「カブトムシ飼育教室」「森の素材でクリスマス飾り作り」など森林体験イベントを企画し実施しています。

近隣の小学校対象の森林環境教育:間伐作業を見学

 NPO法人森づくりフォーラム主催の「初心者のための森づくり体験会」では、森づくり作業で最もドラマチックな伐倒作業と枝払い・玉切り・皮むきの造材作業を体験するプログラムを実施し、多くの人に森づくり作業に関心を持って頂き、森づくり作業の参加者の確保に取り組んでいます。

初心者のための森づくり体験会:伐倒したスギの皮を剥いて5mの柱材を作る

 学園の生徒の保護者対象のイベント(草木染体験)や学園の文化祭への出展、地域のまちづくり団体が主催するイベントへ出展し、パウロの森の豊かさをPRしています。

若木の育成、技術の伝承、会員の増加・・
それぞれの課題に対する取り組みを続けていく

 ナラ枯れ病の拡大に伴い雑木林の再生活動を進めていますが、老木の為萌芽更新が進まず、若木をいかに育てるかが森の整備の当面の課題です。また月2回の整備活動に参加する会員の高齢化と固定化に伴い、森づくり技術の若い世代への伝承と活動に参加する会員の増加・若返りがパウロの森くらぶの課題です。

 それらの課題に対して、実生のコナラやクヌギを育てて植樹して若木の育成に取り組んでいます。森づくり技術の伝承では、伐倒・間伐作業の研修、木登り・枝打ち作業の体験、道具類(鋸や鉈、斧など)の安全な使い方研修などを企画実施しています。整備活動に参加する会員を増やすために、楽しく参加できるようなイベント(椎茸の駒うち、草木染、山菜を味わう)を定例活動に盛り込んでいます。

参加者を増やす取り組み:春の若菜を天ぷらで食すイベント

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 パウロの森くらぶ

 〇所在地:東京都八王子市下恩方町2727
 〇設立:2013年
 〇WEBサイト:https://pauronomoriclub.jimdofree.com/
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